久しぶりに、山へ登ってきた。
お気に入りのトレッキングシューズを履いて、
ザックに水とカメラと、おにぎりを詰めて。
登山道の入り口で深呼吸すると、
空気がすっと肺に入り、頭の中が一気にクリアになる。
鳥のさえずり、風が葉を揺らす音、
そして、自分の足音だけ。
仕事の中では見えにくくなる「感覚」が、
山ではちゃんと戻ってくる。
自然の中では、嘘がきかない。
登っている最中、ふと空を見上げたら、
雲の切れ間から光が差し込んでいた。
ああ、まさに「ミスマルの玉」みたいだな、と思った。
レンズ越しに見える世界は、
どこか“今”よりも静かで、純粋だ。
仕事も人間関係も、日々のことも、
全部を“ありのまま”受け止めてくれる。
登山って、頂上が目的だと思われがちだけど、
僕はむしろ“過程”の方が好きだ。
汗をかいて、呼吸が乱れて、
それでも前に進んでいくプロセス。
まるで人生そのもの。
山頂に着いた時のあの達成感よりも、
そこで飲む一杯の水や、
静かに吹き抜ける風の感触の方が、
僕には価値があるように思える。
自分を“取り戻す”って、
こういう瞬間に訪れるんだと思う。
下山途中、小さな蝶が僕の肩に止まった。
その時ふと、「ああ、今日も龍神が見てくれてるな」と感じた。
自然の中には、見えないけど確かな存在たちがいる。
それは神社も、山も、川も、全部そう。
僕らは彼らに“生かされてる”。
この氣づきを忘れずにいたい。
登山から帰ってきたら、
あたたかいシャワーを浴びて、
夕方の空を見上げながら、今日の一日に手を合わせた。
「また明日から、地に足をつけて進んでいこう」
山に登ると、いろんな自分に会える。
その全部を抱きしめて、また日常へ還っていく。